伊藤万理華・ドラマ『パーセント』は障がい者を起用した、お涙ちょうだい物語ではない。日本の作品が踏み込まなかった、新しい道の開拓だ【小林久乃】 |BEST TiMES(ベストタイムズ)

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伊藤万理華・ドラマ『パーセント』は障がい者を起用した、お涙ちょうだい物語ではない。日本の作品が踏み込まなかった、新しい道の開拓だ【小林久乃】

伊藤万理華

 

◾️なぜ障がい者はかわいそうなのか?

 

 物語が進むにつれて面白くなっていくのは、健常者、障がい者というラインがだんだんぼかされていくということ。出演者全員が自然に調和している。皆、同じように少しずつ苛立ち、悩んで、そして目の前のことに向き合う。

  「車イスっていう分かりやすい障がいなのも、絵的にいいかなって。ドラマなんだし」

  当初は未来にもこんな思いがあった。車椅子だから特別、かわいそう。そんな思いも、ハルの一撃によって次々に壊されていく。

 未来の恋人で、脚本を手伝うことになった町田龍太郎(岡山天音)も自分の書いた原稿が真っ赤にされてしまう。他にも、熱意を持ってテレビマンになったはずの未来の同僚は

 「テレビでやりたいことやってる人なんか、ほとんどどいないんスから。笑えるとか、泣けるとか、視聴者が見たいって思う番組作るのがテレビでしょ」

 と、熱量を捨てて諦めていた。そして撮影現場ではハルが「障がい者の子が頑張ってるやんけ!」と特別扱いされることに憤りを覚え、悩んでいた。

 皆が少しずつコンプレックスや、フラストレーションを抱えて物語が回っていた。際立っていたのは障がい者を商売道具にした、おっさんたちだった。これが今の日本のエンタメが抱えている課題。NHKはその事実にど正面から斬り込んできた。

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小林久乃

こばやし ひさの

コラムニスト、編集者

出版社勤務後、独立。2019年「結婚してもしなくてもうるわしきかな人生」(K Kベストセラーズ)にて作家デビュー。最新刊は趣味であるドラマオタクの知識をフルに活かした「ベスト・オブ・平成ドラマ!」(青春出版社刊行)。現在はエッセイ、コラムの執筆、各メディア構成、編集、プロモーションなどを業とする、正々堂々の独身。最新情報はhttps://hisano-kobayashi.themedia.jp

 

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